しぐのるです。
WSJの記事で、AT&T関連の記事があったので紹介します。
以下記事抜粋
「買収されたタイム・ワーナーのメディア部門で長くトップを務めたHBOのリチャード・プレプラー最高経営責任者(CEO)とターナーのデービッド・レビー氏が辞任した。
新たな支配者となったAT&Tの幹部が勝利を収めた形だが、その見掛け上の勝利には危険が伴っている。ネットフリックスなど他のハイテク企業は独自のコンテンツ事業を構築することに成功してきたが、それを内部資源によって進めてきた。エンターテインメント業界の経験がないAT&Tがエンターテインメント企業をうまく運営できるのだろうか。タイム・ワーナーの中心で才能や創造性を育ててきた2人が辞めてしまった今ではなおさらだ。」
抜粋ここまで
このHBOは有料チャンネルを運営するケーブルTV放送局で、
2016年末で契約者数はアメリカ全体で4900万人、全世界では1億3000万人が契約するチャンネルです。
コンテンツで有名なところは「ゲーム・オブ・スローンズ」とのことですが、米国ドラマは24ですら全く見ていない私は知りませんでしたが、同社の「セックス・アンド・ザ・シティ」は聞いたことがありましたね、タイトルだけ。(放送当時しぐのるさんは思春期真っただ中)
同社のCEOだったリチャード・プレプラー氏は「コンテンツの量より質を追求する」経営を行っていました。
その証拠にHBOとネットフリックスでは、
売り上げがネットフリックスの方がHBOの倍近く多いのに、
営業利益では逆にネットフリックスよりもHBOの方が倍近く多いです。

HBOはAT&T傘下でこれまでのパフォーマンスを維持できるのか?
なぜここまでネットフリックスとHBOとで売り上げと営業利益に差が出来るのかというと、
理由はその製作本数で垣間見ることが出来ます。
例えば、オリジナル脚本の番組製作で、HBOが21作なのに対してネットフリックスは88作も作っています。
これはつまり、ネットフリックスが「数うちゃ当たる戦法」で予算と言う名の弾丸をマシンガンでバラまいて、その内一つか二つをヒットさせているのに対し、
HBOは「一発必中」と言わんばかりに予算を「売れるコンテンツ」に絞って使うことで、ヒット作をより少ない予算で生み出す為、高収益になっていると考えられます。
AT&Tのタイム・ワーナー買収は、このHBOを手に入れる目的であるところが多く、
実際、合併後のAT&Tの決算にはHBO買収効果が見て取れます。
では、今後もこのHBOの高収益体制は続くのでしょうか?
実はこのHBOの「一発必中」のコンテンツの作り方は、決まった数しか放送できない、従来の放映スケジュールに合った作り方といえます。流す事ができるコンテンツ数が決まっている以上、量の事は考えず、質を突き詰めれば売れる時代でした。
しかし、時代はストリーミング放送の時代で、もはやこの放映スケジュールに縛られる「量の制限」がありません。
つまり、有り体にいえば、ユーザーが好きな番組を好きな時に見る事ができる以上、多種多様な番組を提供するメディアが強くなるということです。
今回のプレプラー氏の辞任の背景は、AT&T側との衝突があったと考えるのが普通です。
それはおそらく同氏の進めてきた「量より質」のコンテンツ制作体制によるところが大きかったのではないかと思われます。
HBOは質の高いコンテンツを作る事でブランド価値を築き上げてきました。
今後、AT&Tの旗振りによって、その質が万が一低くなるような事があれば、
最悪の場合は、先のKHCの様なのれん代の減価償却といった事態になりかねません。
何よりも、質の伴わないコンテンツは早晩淘汰されるのがメディア業界です。
AT&TがHBOのコンテンツ制作の文化を破壊した結果、HBOの価値がどうなっていくか、
AT&Tホルダーは注視しておく必要があると思います。
但し、破壊と創造はセットであることも覚えておかなくてはなりません。
これまで、プレプラー氏のやり方によって、抑えられてきたコンテンツも少なからずあるはずで、その中に金のドル箱コンテンツが眠っている可能性は十分にあります。
質を重視しすぎた結果、消費者のニーズと合わないモノが出来てしまって中々売れない。
という失敗談は日本メーカーでは「あるある」ですね。
そもそもアメリカという国は、「質はそこそこ 物量 is POWERRRR!」なお国柄(第二次世界大戦感)だったハズですから、ある程度は量作ってもいいんじゃないですかね。
ひゃなばい